Tokai University School of Medicine Department of Orthopaedics
Tokai University School of Medicine Department of Orthopaedics

取り扱う疾患

【脊椎脊髄疾患】

当科には現在、日本脊椎脊髄病学会の指導医が5名在籍しており、脊椎脊髄変性疾患や外傷に関する治療を提供しています。

背骨や神経の問題は、患者ごとに異なります。当院では、正確な診断を行い、それぞれの患者に最適な治療方法をアドバイスすることを心がけています。外科的治療においては、低侵襲の脊椎治療や最新の外科治療技術を用いた、より安全な治療を提供しています。

また、当院では分院や関連病院とのカンファレンスを通じて外科治療の質を維持・向上させ、患者さんに最新かつ最適な治療を提供することを目指しています。

【低侵襲手術の促進】

患者さんの負担が少ない低侵襲手術を積極的に取り入れています。

【先進機器の導入】

従来の手術では医師の経験によって手術成績にばらつきがあるという問題がありましたが、当院ではO-arm 2やロボットCアームなどの最先端の手術支援機器を導入することで、安全性の向上に注力しています。これに加えて、通常のナビゲーションに加えて術中3D画像撮影が可能な機器も活用しています。

Masahiro Tanaka , Daisuke Sakai, Akihiko Hiyama, MD, PhD, Hiroyuki Katoh, MD, PhD, Masato Sato, MD, PhD, Masahiko Watanabe, MD, PhD et al.

 Global Spine Journal  2023, Vol. 0(0) 1–11

【安全性へのさらなる追求】

また近年では3D可視化技術の応用にも力を入れており、AR、MRを用いた更なる低侵襲で安全な手術治療への取り組みも始まっています。


当科では、椎間板ヘルニアや腰椎変性疾患などの脊椎疾患に対して、できるだけ患部の機能を保つ手術法を選択しています。具体的には、顕微鏡下ヘルニア摘出術や内視鏡的ヘルニア摘出術などを用いて、椎間板のヘルニアを摘出し、脊椎の固定術を行っています。また、椎間板再生に対する基礎研究も行っており、ヘルニコアという治療法により、椎間板の再生を促進しています。

椎間板再生の基礎研究に関しては椎間板再生 -研究内容- – 東海大学医学部 外科学系整形外科学 (u-tokai.ac.jp)こちらから詳細をご確認いただけます。

また、頚椎症性脊髄症や側弯症などの疾患に対しては、最新の設備を駆使して手術を行っています。具体的には、CTナビゲーションや脊髄刺激モニタリング、自己回収輸血などを利用して、安全性に配慮した手術を実施しています。また、新しいインプラントの導入により、人間の本来の弯曲に近い矯正術が可能となっています。

さらに、脊髄腫瘍に対しても顕微鏡下手術による良好な結果が得られています。頚髄症に対しては、当科独自の拡大術を考案し、手術法を改良しています。以上のような手術法の改良により、術後安静期間を短縮化し、患者さんの早期回復を促しています。例えば、腰椎や頸椎疾患に対しては、手術後2日で歩行可能となるようにしています。

【膝関節疾患およびスポーツ障害】

スポーツ外傷による膝前十字靭帯損傷、半月板損傷に対しては全例、関節鏡視下手術を行っています。また離断性骨軟骨炎や反復性膝蓋骨脱臼などの疾患に対しても関節鏡を併用し、低侵襲手術を心掛けております。以前と比べ入院期間も著しく短縮され、前十字靭帯の術後は約2週間で退院が可能です。半月板手術は約1週間で退院が可能となっています。

関節リウマチや変形性膝関節症によって軟骨がすり減り、鎮痛薬や関節注射などの保存療法を受けても膝の痛みが緩和されない患者様には人工関節置換術を数多く実施しています。また人工関節置換術だけではなく、ご自身の膝関節温存を希望される患者様には膝周囲骨切り術も積極的に行っています。ただしどちらの手術も長所と短所がありますので、主治医とよく相談して治療法を選択することをお勧めします。

人工膝関節置換術前と術後のレントゲン写真

高位脛骨骨切り術前と術後のレントゲン写真

東海大学では変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を併用した自己細胞シート移植による軟骨再生治療が先進医療Bとして承認されており、これまで12名の患者様に移植手術を行っております。また手術に至る前段階として多血小板血漿(PRP)の関節内注射による変形性膝関節症治療にも積極的に取り組んでいます。

詳細はhttps://ortho.med.u-tokai.ac.jp/research-3/でもご覧いただけます。

肩関節疾患およびスポーツ障害

いわゆる「五十肩」の中には腱板断裂、肩関節不安定症をはじめとした診断、治療の難しい疾患が含まれている事が分かってきました。また、最近のスポーツ外傷の急増に伴い、throwing athlete の肩関節障害に注目が集まっています。当科では超音波断層撮影、MRIを駆使した鑑別診断を行い、適切な治療をするように心がけています。手術加療としては関節鏡を併用したmini openでのアプローチでの腱板修復術のほか、広範囲な腱板断裂に対しては大腿筋膜移植を併用した上方関節包再建術を行っております。

反復性肩関節脱臼をはじめとした肩関節不安定症には関節鏡下での関節唇修復、関節包縫縮術を行っております。症例により、remplissage法を追加しており、スポーツ選手の治療も行っております。

スポーツ領域ではそのほか、高校野球選抜選手の大会前検診や柔道の大会の帯同なども行っております。

転位の著しい上腕骨近位粉砕骨折などの外傷や関節リウマチ、変性による肩関節の変形に対してはリバース型人工関節置換術を行い、良好な結果を得ています。

また、高度救命救急センターを併設しているため肩関節周囲の複合骨折等(SSSC損傷など)に対しても多様な手術加療を行っております。

肩甲骨烏口突起骨折に対しては当院で導入しているO-arm navigation systemを使用しての骨折治療を行っております。

手外科、肘関節外科、末梢神経疾患、マイクロサージャリー 】

《手外科》

  • 日帰り手術:手根管症候群、弾発指、デケルバン腱鞘炎、マレット指、腱断裂、指の骨軟部腫瘍など
  • 骨折:手指骨折、手根骨骨折(舟状骨骨折など)、手関節骨折(橈骨遠位端骨折など)、前腕骨折
  • 変性疾患:ヘバーデン結節、母指CM関節症、関節リウマチによる手指・手関節変形など
  • 骨壊死疾患:キーンベック病など
  • 腱損傷
  • 拘縮:Dupuytren拘縮

《肘関節外科》

  • 骨折:肘関節骨折、上腕骨骨折(上腕骨顆上骨折など)
  • 変性疾患:変形性肘関節症、遊離体、上腕骨外側上顆炎、関節リウマチによる肘関節変形など
  • 骨壊死疾患:離断性骨軟骨炎
  • 変形:骨折後の変形治癒(内反肘など)

《末梢神経疾患》

  • 神経麻痺:手根管症候群、肘部管症候群、後骨間神経麻痺、前骨間神経麻痺、ギヨン管症候群など

《マイクロサージャリー》

  • 神経損傷
  • 切断肢

術後は理学・作業療法士と相談をしながらリハビリテーションを行ないます。

【 股関節疾患および骨盤外傷】

股関節の疾患では,主に臼蓋形成不全症、変形性股関節症、大腿骨頭壊死症を扱っています。 臼蓋形成不全症、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症には人工股関節置換術を施行しています。術後脱臼の合併症を減らすべく、従来の後方アプローチだけではなく、前方アプローチも積極的に取り入れています。

また、変形性股関節症に対しては多血小板血漿(PRP)による治療にも積極的に行っています。

骨盤骨折には放射線科の協力を得て、経カテーテル的動脈塞栓術を積極的に行って救命に努めております。複雑な骨盤骨折や股関節脱臼骨折には3次元CTで骨折型を立体的に把握して手術を行っています。手術加療に関しては創外固定術、直視下での骨折観血的手術、CTナビゲーションシステムを使用した低侵襲手術を行っています。

【骨・軟部腫瘍】

骨や軟部組織(脂肪組織や筋肉など)からできる悪性腫瘍は肉腫と呼ばれ、肺癌や乳癌といった悪性腫瘍(狭義のがん)とは区別されています。 肉腫はがんに比べると発生頻度が低いため非専門施設では経験が少なく、診断と治療が遅れることがあります。当科には骨・軟部悪性腫瘍、すなわち肉腫の診療を専門としたスタッフが2名おり、最新の画像診断と病理学部門の協力による病理組織診断をもとに、エビデンスに基づいた治療を行なっています。

悪性骨腫瘍の代表とされる骨肉腫やユーイング肉腫は小児期に多い疾患です。化学療法(抗がん剤治療)と手術が必要で、現在確立された標準的治療があります。 小児に対しては当院の小児科医の協力で化学療法を行い、われわれ骨軟部腫瘍外科医が手術、主に患肢温存手術を行います。四肢の関節周囲に発生することが多いため、腫瘍切除後の骨・関節の欠損による患肢機能低下が問題になります。

一般には腫瘍用人工関節を用いた再建術が行われていますが、当施設ではできうる限り術後の患肢機能を良好に保つことを目標に手術を行なっております。 例えば膝関節が温存できると判断した場合には関節面を残して腫瘍を切除し、切除した骨を液体窒素処理することで腫瘍を死滅させた後再利用する手法を選択します。関節面が残ることで人工関節と比べると良好な患肢機能が期待されます。

軟部肉腫に対しては手術による腫瘍広範切除術が原則です。術前に造影MRIにて腫瘍の進展範囲を十分に評価した上で切除範囲を設定します。切除により大きな筋肉や皮膚欠損が生じる場合があり、形成外科医のお力をお借りして筋皮弁形成術も併用しています。

また肉腫は全身のあらゆる部位に発生するため四肢以外の胸壁・腹壁など体幹部も手術の対象です。胸部外科や泌尿器科とも共同で手術に臨んでいます。不幸にも肉腫が進行すると遠隔転移(特に肺に多い)を生じることがあります。 全身化学療法や放射線照射などを駆使し、少しでも生命予後を改善すべく努力しています。このように東海大学では他科との連携により肉腫に対する集学的治療を行うことができます。

大腿骨骨肉腫に対する液体窒素処理骨と血管柄付き腓骨移植を組み合わせた再建術

膝窩部軟部肉腫切除後、遊離広背筋皮弁による再建術

【骨・関節外傷】

当院には高度救命救急センターを併設しており、多くの多発外傷・骨折を扱っています。年間の手術件数は全体の4割(800例)程度であり、各部位のスペシャリストが骨盤骨折や脊椎外傷を含む、高エネルギー外傷の治療にあたっています。

特に開放骨折に対しては受傷後早期の創外固定やデブリードマンを行ったうえで、2期的に内固定を行うことで、術後感染率の低下と術後の機能改善を目指しています。また複雑骨折の術後や回旋変形・短縮変形などによる骨癒合不全(偽関節)の患者さんには積極的に超音波骨折治療器(LIPUS)の導入や骨移植術やdecorticationを併用した偽関節手術を行っております。

難治性骨折(感染性偽関節)に対してはiMAP(intra-medullary antibiotics perfusion)・iSAP(intra-soft tissue antibiotics perfusion)によるCLAP(continuous local antibiotics perfusion)やMasquelet法による2期的な感染治療を行い、対応しております。